『マジカルガール』
2014年公開 127分 スペイン
監督:カルロス・ベルムト
娘編
母編
あー、びっくりしたー。
なんていう映画なんでしょうか。
すごくびっくりしました。
「マジカルガール」なんてかわいい題名付けて、ひどいです。
非道い と漢字をあてたくなる非道さです。
もう、どんどん怖くなる映画で、救いがない。
そんなわけで非常に
おもしろかった!
です。
どういうところがおもしろかったのか、いくつかあげておきます。
1: 全部見せない
なんかもう、全然見せないんですよね。いっさい説明しないし。
バルバラと教師ダミアンの間になにがあったのか?
バルバラの身体の傷、心の傷の原因は何なのか?
秘密の部屋では何がおこなわれているのか?
見てるこっちは全部知りたくてモヤモヤするんだけど、全部見せちゃったらやっぱりつまんないんですよね。
私の想像の中では、「ダミアンは幼い教え子だったバルバラに心を奪われていて、彼女を救うためにバルバラを虐待してた父親を殺しちゃって刑務所にはいったという過去があって、バルバラはそんな過去のせいで男性が怖くて、でも被虐的な思考も強くて、そうした性産業の斡旋業者であるアダと恋愛関係になり、それなりの仕事もこなして暮らしていたのだが、新しい人生を始めたくて精神科医にかかったのか、精神科医が顧客だったのかはよくわからんが、とにかく精神科医と結婚した」ことになっている。
ええ、読み飛ばしてください。妄想なので。
本当のところはわからないし、隠されているからこそ、すごくぞくぞくしますよね。
隠された部分についてエグイ妄想をしては、自分のゲスっぷりを呪うという、一種倒錯した楽しみを与えてくれる映画でした。
観終わったあと、わりと隠されていないこちらの漫画を思い出しました。
この映画好きな人なら好きなんじゃないかな。
2: せつない魔法少女
白血病のアリシアちゃんは無表情で、大好きなアニメのことを考えてるときだけは笑顔になれる感じ。
そのアニメのタイトルが「魔法少女ユキコ」
ユキコってとっても日本的な名前で。もちろん日本のアニメで。
私にはなんの責任もないはずですが、ユキコのコスプレ衣装が90万円もしてごめんね……と泣きそうになりました。
お父さんの気持ちもよくわかるのよ。
最初のところで友人宅へのお泊りを許さないのにタバコや酒を許しちゃうでしょう。タバコや酒がいいなら、お泊り会くらい許してやれよって気になるのですが……。
お父さんはね、「宿題もちゃんとしないのにダメだ」とフツーの子に対するようにダメだしした直後に、ああ、この子はフツーじゃなかった、もうすぐ死んじゃうんだった、と思い出して、タバコやお酒を「いいよ」って許しちゃう。だって法律で許される年齢まで生きられないんだから。
娘の死を受け入れられなくて、でも受け入れるしかなくて、というお父さんの気持ちがすごく伝わってくるシーンでした。泣けるよね。(まぁその後のお父さんのゲスっぷりを見るとなんとも言えない気分になるのですが。)
死ぬまでの時間、できるだけたくさんパパと一緒にいたいっていうのがアリシアちゃんの願いだったのに、それを伝えるすべがなかったことがほんとーに残念です。ノートに書いておけばよかったのにね。
思わず魔法のステッキを探す彼女がかわいくてね……。なんでタカラトミーが出してないんだよ!5,000円くらいであるだろ!とツライ気持ちになりました。
あの値段はたぶん本物のダイヤとか使ってあるやつだよ。
『グランド・ブダペスト・ホテル』
2014年公開 100分 アメリカ・ドイツ合作
監督:ウェス・アンダーソン
娘編
グランドブダペストホテルといえば
このシーン。このイメージ。
ケイティーペリーのカリフォルニアガールズやニッキーミナージュのスーパーベースを彷彿とさせる色合い。裏原宿に多分こんなお店ある。KAWAII。
このビジュアルに惹かれておかんにDVDを借りてきてもらった。
これがお話に出てくるグランドブダペストホテル。
外見はおもちゃの家みたい。これ2014年の映画なの??!って思った。
背景とのミスマッチ感がレトロでよき。
ちなみに内観もめっちゃ素敵。私のお気に入りの場所はここ。
お風呂!!!シャワーがレトロすぎる。昔はこんなんだったのか。
トトロに出てくる古〜い電話の受話器みたいな形してる。
でも注目すべきはそこではない。浴槽に浸かっている彼なんですよ。
彼、、、ジュードロウなんですよ。いや、まじか。
ちなみに映画の中でこの人が映ってるシーンたった10分くらいだと思う。多分名前すら出てきてないのでは?
なのにジュードロウ。ぬかりないわ。
あらすじとしては、このジュードロウ演じるホテルの宿泊人がひょんなことからホテルオーナーのゼロさんとディナーをすることになって、彼が話してくれるグランドブダペストの昔話が映画のストーリーになっていくっていう展開。
この映画、ビジュアルはとっても可愛いのに話の内容はちょっとゾッとしちゃう感じ。戦争シーンとか刺し合いのシーンとか、コメディサスペンスおきまりの(?)指がとれちゃうシーンとか、ブラックジョークが意外と多かった。
それがグランドブダペストのきゃわいいビジュアルとのギャップを生んで、個人的に後半かなーり不気味だった(笑)
これとか。
ヒええ〜。戦車とMENDLのコントラストよ。ここまできたらもう戦車すら可愛いよ。
それから、遺産相続争いに巻き込まれたムッシュグスタフとゼロが殺し屋を崖から突き落とすシーンは殺し屋ごめんだけど笑ってしまった(笑)
そこに至るまでずっとドキドキしてヤバイヤバイと思いながら息を飲んで見守ってたからか、殺し屋がどんって押されてポーンと落ちた途端笑いがこみ上げてきた。自分こわ。人は予想外のことが起きると笑っちゃうって言うけどね。
残念なのはバイト終わりに眠気まなこで見たから細かいところまでちゃんと見れてないってこと。字幕も一瞬追えてないところありそう。
戦車に書いてある文字とかも気になったからちょっともう一回借りて見たいな。これメイキングとかないのかしら。ロケ場所とかも気になる。
ハッッ!!気になるといえば、この映画最大の気になりポイントを言い忘れていた。これだけは言わせてくれ。
ゼロ老けたら顔変わりすぎだ!!!!
母編
ピンクとブルーのビジュアルが可愛くてすごく気になってました。
「わー可愛い!」って感覚は母も娘も一緒なんだなーと感慨深いものがあります。
ホテルものと言えば、ずいぶん昔に観た「フォー・ルームス(Four Rooms)」
映画館で観たんだよな~と思い出して調べたら、1995年の映画でした。
コメディなんだよね。ホテルのそれぞれの部屋でいろんな事件が起こるわけです。
ベルボーイが狂言回しの役でね。
オムニバス映画で、うち1本はクエンティン・タランティーノが監督しています。
そのへんは忘れてたね。
当時は知っていて観たんでしょうか?
いろいろ覚えていないのは年ですな。すべては年のせい。
それと邦画の「THE 有頂天ホテル」
これは2006年ですね。これもコメディ。
「ホテルニューハンプシャー」ってのもあるのだけど、
これは原作がすっごく好きなので映画は観てません。
1984年の作品ですのでね。パッケージが古めかしいですね。なんかね。
そんでもって、『グランドブタペストホテル』も見た目カワイイ系だし、
なんかホテルに泊まりにきた個性豊かなお客様があれこれと事件を起こす
オムニバス系のコメディ映画だと思っていたのですが、全然ちがいました。
いまは廃墟同然と化したホテルが、どうやって現オーナーのものになったのか、
という回想録でした。
作家がオーナーにインタビューする(食事しながらお話を聞く)ていで進む物語。
おもしろかったなー!
どうでしょうか、文字色をグランドブダペストホテル色にしてみました。
おもしろかったですよ、ほんとに。
映画全体が3つの年代を描く入れ子構造になっているから画面サイズが違う、とか、
ホテルの外観とかミニチュア模型ですよ、とか、
ほかのみなさんのブログでたいへん楽しめる話題がありますので、
個人的な雑感をいくつかメモしておきます。
1: 鼻の下のひげ
主人公のボーイくんが鼻の下に描くひげ。
黒のペンシルでびゅーっと1本線ひくだけなんだけど、
「月曜から夜更かし」という番組に出てくる「よっちゃん」という初老の男性が
こういうひげを描くのね。
彼は黒のマジックインキで描くんですが。
それをふと思い出して、一人前の男になろうと背伸びしている青年、
人生の晩年になって男としての化粧をする老人、
それぞれの憧憬の対象が、
グスタヴに代表される壮年期の「男」なのね、としみじみした次第。
彼、最高ですもんね。
そして、「サザエさんちの波平さんのひげは、鼻の下にタコの足みたいなひげだな」と思いました。
ひげの描き方って文化的背景によって変化するんでしょうか?
単に好みの形状の問題かな?
「この男性の顔にひげを描いてみてください」っていう調査をしてみたいですね。
「ヒゲのОL藪内笹子」ファンとしては、女性でも可です。
2: コンシェルジュ、グスタヴ
グランドブダペストホテルそのもの、ともいえるコンシェルジュ、グスタヴ。
彼のきびきびした所作とホスピタリティにあふれたふるまい、
マダムを満足させる手腕の数々を観たあと、
観客に、あっ!と声をあげさせるのは
彼の居室の狭さではないでしょうか。
生粋のホテルマンとか旅館業の人には当たり前のことなのかもしれないけど、
わたしは「あっ!」て言っちゃったよね。
こんな窓もない狭い屋根裏に住んでるんだ!と。
昔から使用人の部屋は屋根裏で狭い、っていうのは洋の東西を問わずなんだけど、
思わずさ。
テンポの良い映像がもたらすワクワクドキドキは映画の醍醐味ですね。
そして終盤、法廷で証言し、陪審員をドッと笑かすグスタヴの姿。
彼の真骨頂って感じ。
有名ホテルのコンシェルジュ同士のネットワーク(秘密結社)も
さもありなん、って雰囲気でおもしろかった!
古き良き時代の超一流のホテルって、優れたコンシェルジュで成り立っていたんでしょうね。
ところが、その彼も時代の波には勝てず、かつて助かったシーンと同じシチュエーションで没するわけです。
己の信念に生きた男、グスタヴ。
伝説になるにふさわしい人だったなーと思います。
監房で、こわもての大男に親切に給仕する彼が好きだな。
フェアで、物おじせず、寂しがり屋で、ちょっと尊大で、
チャーミングですよね。
映画を観終わると、彼のこと大好きになってるの、いいなと思いました。
3: 殺し屋の小道具
あの死神みたいな殺し屋、こわかったねぇ。
でもスキーのシーンなんかはミニチュアの撮影で、
シューってすべってくお人形がかわいくて楽しかった。
そして、彼のポケット付き革ジャン!
ウイスキーのフラスコが胸のところに入れられるやつ!
あれ欲しい!
4: おとぎばなしの仕掛け
映画全体がおとぎばなし風というか、
どこか浮世離れした雰囲気の漂うものだったのは、
コミカルな演技や演出と、ところどころに出てくるミニチュア撮影の影響だと
思います。
グスタヴの亡くなり方や、次々に人が殺される状況、
アガサもあっさり他界する展開はなかなかシビアなのですが、
悲劇を感じさせない映画でしたよね。
中でも、ホテルが軍に徴用されるシーンは印象的で。
ピンク色のホテルにおしゃれな軍旗がババーンっとひるがえって、
ああ、あの恐ろしい悲劇もこんな風にスタイリッシュに演出すれば
かわいい!みたいになっちゃうんだという事実が余計に怖かったです。
向かい合うホテルの部屋から軍人が出てきてパンパン撃ち合う銃撃戦も、
ピストルの音の間抜けさとか、ほとんど当たらない銃弾とか、
余計な演出(音楽とかカット割りとか)がなければ、
戦争とか人殺しの現場ってこういう乾いたものなんだろうな、と感じました。
おとぎばなしの中に、おとぎばなしっぽく見える現実を紛れ込ませてる感じがして、虚構って何だろうなぁなんて考えたりしましたね。
ぼくらの現実って、どこにあるんだろう?などと、
大学生みたいなことを感じました。
アラフィフ主婦の雑感としてはこんなところです。
なんだか脳が衰えてきてるのか、心がしぼんでるのか、
映画の感想も長丁場で考えられないんだよねー。
若い人には、たくさんものを考えてほしいと思いますよ。
あと、この映画を観て思い出した絵本をご紹介します。
ブダペストホテルみたいなブルーとピンクが印象的な素敵な絵本です。
オランダにある実在のホテルを描いた作品なのよ。
『ようこそロイドホテルへ』野坂 悦子
あとは個人的なメモ。
はてなブログって便利だね。